本年度は水ー有機異相界面としてAOT逆ミセルを分子集合体として用いた。この水ー有機相界面に、両親媒性のポルフィリン化合物、カルバゾ-ル化合物及びフェノチアジン化合物を担持し、これを光増感剤として光誘起電子移動反応と2光子イオン化について検討した。 まず、逆ミセル上に担持したポルフィリンから逆ミセル内の微小水滴上のビオロ-ゲンへの光誘起電子移動移動について、外部磁場効果を用いて検討を行った結果、これまで電子供与体ー電子受容体の連結系でしか得られていなかった外部磁場効果が顕著に現れた。又、水滴の直径が大きくなるに従って、この外部磁場効果が小さくなることが明かとなった。このことは、ミセルの大きさがそのままポルフィリンービオロ-ゲン間の距離に反映されていることを示しているとともに、逆ミセルが擬似連結系となるためのケ-ジの役割を果たしていることが明かとなった。 一方、AOT逆ミセル界面上に担持した両親媒性ドナ-は、紫外光励起で容易に2光子イオン化する事がわかった。このイオン化は、微小水滴内の水の状態によって変化する事が示された。又、これによって生じたラジカルイオンのAOT逆ミセル上の配置について、電子スピンエコ-法によって検討した。その結果、ドナ-部位と親水部との間のメチレン鎖長がn=4〜8ではドナ-部位が水滴より離れていくが、n=12になるとかえって水滴に近づくことが判明した。これはメチレン鎖の自由度の増加によるものと考えられる。同様なことがスピンラベル剤を使った電子スピンエコ-法の結果からも得られた。このように、逆ミセル系での電子スピンエコ-法を用いることによって、光増感剤のミセル上での存在状態を調べることが出来た。
|