研究概要 |
本研究では、光誘起電子移動と熱的逆反応で電子状態のみ定常的、可逆的に変化して発色・消色する新しいフォトクロミズム(光誘起エレクトロクロミズム)についてドナ-及びアクセプタ-イオンの構造、微視的環境(媒体・温度など)の効果、フォトクロミック化合物の分子配列状態などを調べ、新しい光情報変換・高密度光記録媒体としての可能性を検討することを最終目的とし、本年度は次のような成果を得た。 1酸化還元イオン対電荷移動錯体の合成 酸化還元により色変化を示す化合物として対称及び非対称のアルキル置換基を有する4,4'-ビピリジニウムイオン及び主鎖の一部に4,4'-ビピリジニウムイオンを含むポリマ-を合成した。嵩高い置換基を持ち極めて安定なテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレ-トアニオンを用いて、そのようなカチオンとの塩を構成した。 2両親媒性イオン対電荷移動錯体の単分子膜特性測定と累積膜の構成 両親媒性イオン対電荷移動錯体とアラキジン酸との種々のモル比の混合系で水面上での単分子膜特性を調べ、最適条件で石英ガラスに累積採取した。また、石英ガラス上にポリマ-キャスト膜を構成した。 3電荷移動錯体励起によるフォトクロミズム 電荷移動吸収帯のみを脱酸素下で励起し、薄膜系で光誘起電子移動及び熱的逆反応による淡黄色=青色の定常的可逆的色変化を観測した。 4薄膜中の酸化還元基の分子配列状態の検討 光照射前後で単分子累積膜の偏光吸収スペクトルの入射角依存性や偏光角依存性を測定した。ラジカル減衰及び光路長の補正を行い、4.4'-ビピリジニウムカチオンラジカルの分子配列状態を検討した。対称型では基板面に約45度傾き、非対称型ではほぼ平行であることを見出し、置換基によりラジカルの配列を制御できることを初めて明らかにした。
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