本研究では、LB法及び吸着法を用いて機能化した電極上でヘム蛋白質であるチトクロムc及びその関連物質、さらにフラビン蛋白質等について、電子移動反応を検討した。得られた成果の概略は次の通りである。 1.プロモ-タ-修飾電極の特性評価とチトクロムcの電極反応:LB法及び吸着法を用いて修飾した電極の内、ピリジン系プロモ-タ-分子で修飾した電極上ではチトクロムcの速い(>10^<-3>cm/s)電子移動が認められたのに対して、対応するフェニル系分子で修飾した電極では電子移動反応が抑制された。修飾膜機能を金属錯体を用いたレドックス反応及び長光路セルを用いた分光学的手法を併用して検討した結果、電極表面での修飾分子の吸着量の30%以下の変化が、その電気化学挙動に大きな影響を与えた。特にフェニル系修飾剤の中から、長鎖アルキル基を持たない小分子の単分子膜が金属錯体の電極反応を完全にブロックする例を初めて見出した。 2.呼吸鎖末端の電気化学モデルを用いた電子移動反応:プロモ-タ-単分子膜で機能化した電極を用いてチトクロムcとその生理学的酸化還元相手との電子移動反応を検討した結果、チトクロムcとリダクタ-ゼとの反応はオキシダ-ゼとの反応に比べ蛋白質表面のアミノ酸配列の影響を顕著に受けること、また、チトクロムcのアミノ酸修飾はプロモ-タ-修飾電極上での電極反応に比べ蛋白質分子間電子移動に顕著な影響を与えることが明らかになった。 3.フラビン酵素の電極反応:起源の異なるサルコシンオキシダ-ゼの電極反応の検討から、蛋白質の直接電子移動に及ぼす分子サイズの効果が示された。特に、分子量4万程度のBacillus由来の酵素について電極上での直接電子移動が見出された。
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