今までアクリロニトリル(I)の水和によるアクリルアミド合成の触媒および反応機構について研究して来た。この実績を基に同じ水和反応でも触媒が異なればエチレンシアンヒドリン(II)が生成する。特に塩基性触媒では(II)ばかりでなく、一旦生成した(II)が原料の(I)と反応してビス(2ーシアノエチル)エ-テル(III)を生成する。さらにアクリルアミドまでも(量は少ないが)生成し、分析が非常に面倒になる。本研究ではその分析法をまず確立し、ついでどのような触媒と反応操作で選択的に(II)を生成するのかを目的として研究した。まず分析方法であるが、FIDガスクロマトグラフを用い、カラムとしてジエチレングリコ-ルアジペ-ト+りん酸・クロモゾルブが反応物、生成物の分離にすぐれていること、さらに内部標準物質としてエチレングリコ-ル・モノエチルエ-テルが最適であることを見出した。 水酸化ナトリウム水溶液を触媒として水和反応を行い、生成物を分析する際、この反応混合溶液をガスクロマトグラフに直接導入するとカラムばかりでなく検出器まで破損してしまう。塩酸で中和してから挿入すればよいが、そのときには塩が生成し、カラムが損傷をうける。そこでガラスウ-ルを10〜15cmつめたカラムを分離カラムの挿入端側につなぎ、そこに塩が析出するようにしてカラムの保護が出来た。水酸化ナトリウムを触媒とする均一触媒反応では分析に面倒な点があったので、マグネシアやカルシアのような固体塩基触媒で反応を行った。しかし難溶性の固体塩基触媒の一部が水にとけ反応を促進するということがわかった。したがって均一触媒を固体上に固定し分析を容易にする試みとして、ナトリウム化合物を固体塩基触媒にド-プした触媒を用い、反応物と触媒が接触している時間を種々調節して、副反応生成物である(III)の生成を抑える方法を検討している。
|