本研究は、中・大員環化合物の渡環反応による新しい環構築法の開発を目的とし、エナンチオ選択的Diels-Alder反応(図1)、酸触媒によるエポキシド/オレフィンの渡環反応(図2)について検討した。同時に、分子力場計算による立体選択性の予測、構造決定についても検討した。 14員環エノン1のDiels-Alder反応行い、高い選択性(27:1)でエンド体2が得られた。この結果、MM2遷移状態モデルを計算するのに必要な電子的(効果(エンド効果)を1.22Kcal/molと見積もることができた。この補正項を考慮し、エノン3の計算を行うとエナンチオ選択性は7:3と予想できた。現在、不斉Diels-Alder反応について検討を行っている。 アリルアルコ-ル5のエポキシ化で得られた6の相対立体化学をMM2を用いた配座解析により決定した。すなわち、プロトン間の二面角からNMRの結合定数を算出し、実測値との比較からβエポキシド6であることが分かった。この構造はX線解析でも確かめらさた。さらに、酸触媒による渡環反応について検討し、ビシクロ環7が生成することが明らかになった。6のMM2計算の結果(図3)、反応点間の距離、π軌道の方向がこの渡環反応の選択性に重要な役割をしていることが分かった。現在、種々の酸及び固体触媒により、この反応の検討を行っている。
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