研究概要 |
未端オレフィンの2位の炭素を酸化しメチルケトン体に変換する手法は、Wacker法で代表される周知の反応であるが、未端位(Cー1位炭素)を選択的に酸化しアルデヒド体を得る確立された方法はこれまでにない。本研究では、金属錯体触媒と分子状酸素を用い未端オレフィンをアルデヒド体に選択的に変換する方法を開発することを目的とする。 本研究ではアリル位置換基のキレ-ト制御により末端オレフィンをアルデヒド体に変換する方法について主として検討した。Pdcl_2(CH_3CN)_2とCuClとの組み合せを触媒としヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)を添加した無水の非プロトン性溶媒中で、Nーアリルアミドを分子状酸素と反応させるとオレフィン未端位が位置選択的に酸化されるという前年度の知見を基にし、員環数の異なるNーアリルラクタムと分子状酸素との反応について詳しく検討した。その結果,4員環ラクタム以外は90%以上の位置選択性でオレフィン未端位が酸素化され、対応するアルデヒド1__〜(下式)を与えることが判つた。一方、水を求核剤に用いる通常のWacker型酸化反応ではメチルケトン2__〜が生成し、酸化反応の位置選択性は逆転した。分子状酸素による酸化反応の位置選択性は、パラジウムのアミドカルボニル基とオレフィンとのキ-レト配位で決定され、この配位の起りにくい4員環ラクタムでは良い結果が得られない。反応系に水が存在するとアミドカルボニル基の配位が阻害されメチルケトン2__〜が主として得られることが判った。また、アリルアセテ-ト類でもここで示した傾向とほヾ同様の結果が得られた。
|