研究概要 |
1.緒言 近年、複数の疎水鎖を有する両親媒化合物が二分子膜生成に適している理由で注目を集めている。それらは容易にベシクルやリポソ-ムを形成しDDSシステムの利用を始めとする興味ある用途の開発が期待される。生体膜構成成分であるレシチンは容易に二分子膜を形成し、その集合挙動は広く研究がなされている。著者はレシチン構造を分子設計の指針とし、両親媒化合物の合成を試みた。このものはレシチンのリン酸エステル部位を四級アンモニウムで置換したものであり、日本の長鎖エステルを疎水部に、二ケのアンモニウム基を親水部に持つ化合物である。これらはVortexミキサ-処理や超音波照射によりリポソ-ムを形成することを透過型電子顕微鏡により確認したが、本報告ではこのものを陽イオン界面活性剤として捉え、表面張力低下能についてアシル鎖長の影響や分子中の不斉炭素のキラリティの影響について報告する。 両親媒化合物の合成は反応式に準じて3-クロロ-1,2-プロパンジオ-ルを原料としてラセミ体を得た。またD-マンニト-ルを出発物質として用い、相当する光学活性体(S体)を合成した。 2.結果および考察 表面張力を測定した結果これら二鎖型陽イオン界面活性剤のcmcは非常に小さく、γ_<cmc>も20mN/m以下であった。この値は単鎖型の活性剤に比較してかなり低い値であり、長鎖アシル基が気液界面に配向した場合単鎖型のそれよりも密に配向していることが予想される。C_<12>とC_<14>を比較することにより鎖長の影響を見ると後者のものがより低濃度側にcmcを発現するがγ_<cmc>値に顕著な差は認められなかった。 分子中の不斉炭素のキラリティの差異が表面張力に与える影響についてみるとその差はほとんど認められなかった。
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