研究概要 |
糖は自然界に最も多く存在する炭化水素であり、かつ不斉中心を豊富に分子内に有しているため、その高度な有効利用が期待される。本研究においてはこのような観点から、糖の不斉を利用したキラル選択的錯形成についての基礎的研究を実施した。その結果、以下のような興味ある現象が見い出された。(1)シクロデキストリン(CDx)および鎖状オリゴ糖は胆汁色素であるビリルビン(BR)と水中においても水素結合性錯体を形成し、この際BRに軸不斉が誘起される。BRはCDxの2級水酸基と水素結合を形成する。(2)トリメチルーβーCDxは、(S)ー1,1'ービー2ーナフト-ルとキラル選択に包接錯体を形成する。βーCDxそのものよりもトリメチルーβーCDxの方が高いキラル選択性を示すことより、かさ高いメチル基の不斉増幅が考えられる。(3)フルクト-スと核酸塩基を有するヌクレオシドは、BRと錯体を形成する際、BRの不斉を誘起する。多くの種類のヌクレオシドを用いた円二色性スペクトルニよる検討から、アデノシンの場合には、7位の窒素と2'あるいは3'位の水酸基が、BRと水素結合性錯直を形成することが、BRの不斉誘導には大切である。(4)2つのナフタレン発色団がメチレンで結ばれたパモン酸は溶液中ではアキラルであるが、γーCDxに包接されると(R)ーヘリックス体が主に系中に存在するようになる。パモン酸ーγーCDx錯体の異常な安定性(K=4100M^<ー1>)は、パモン酸のカルボキシラートアニオンとγーCDxの2級水酸基間の水素結合による。核磁気共鳴による検討から、パモン酸の1つのナフチル基はγーCDx空洞内に包接され、他のナフチル基は、γーCDxの1級水酸基側の空洞へり部に位置することが明らかとなった。これらの結果を基に拡張研究として、グルコリピッドの単分子膜についても研究を実施し、(5)グルコリピッドは単分子膜の水ー空気界面において、他リピッドの例えはカルボキシル基等と水素結合を形成し、分子配例を制御する事が分った。
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