研究概要 |
ハイドロボレ-ション反応は有機ホウ素化合物の合成法として利用されている。ボランによるオレフィンのハイドロボレ-ション反応は無触媒下で進行する。従って、触媒下でのハイドロボレ-ション反応についての研究はほとんどない。しかし、触媒下では無触媒下での反応とは異なる官能基選択性、立体選択性、位置選択性などが期待できる。 本研究では、Pd,Rhなどの遷移金属触媒下でのハイドロボレ-ション反応について研究、新規な有機ホウ素反応試剤の合成を行った。ボラン試薬としては無触媒下では反応が極めて遅いカテコ-ルボランを用い検討した結果、種々のRh,Pd錯体がよい触媒活性を示すことを見いだした。これらの結果は下記の合成反応に応用した。 (1)多官能性有機ホウ素化合物の合成とクロスカップリング反応。水素化ホウ素化合物は還元性の強い試薬であるが、Rh-触媒下では二重結合への付加がカルボニル基の還元より優先する。たとえばケトオレフィンのハイドロボレ-ションによりケトン性カルボニル基を有するボロン酸を収率よく合成できた。これら触媒的ハイドロボレ-ションの官能基選択性について研究し多官能性有機ホウ素化合物の合成について検討した。また得られたケトボロシ酸はクロスカップリング反応により種々の有機合成反応に利用できた。 (2)アリル型ホウ素化合物の立体選択的合成。アリル型ホウ素化合物はジアステレオ選択的アリル化剤として重要なものであるが簡便な合成法は無い。Pd-触媒下共役ジエンを1,4-ハイドロボレ-ションすることによりアリル型ホウ素化合物の合成方法について検討し高収率で対応するアリル型ボロン酸エステルを合成することができた。この反応はPd(PPh)により触媒されシス-アリルホウ素化合物が位置および立体選択的に得られる興味ある結果を得た。
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