(エチレン)トリス(トリフェニルボスフィン)ルテニウム(O)とクロトン酸アルキルエステルとの反応から定量的なエチレンガスの発生とともに、末端メチル基の炭素一酸素結合がルテニウムに酸化的付加したと思われるヒドリド(1-メトキシカルボニル-π-アリル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)を単離した。一方、このルテニウム(0)錯体とメタクリル酸エステルの反応ではβ位のオレフィン性炭素-水素結合が選択的活性化される。これらの結果はアリル位の炭素-水素結合のほうがオレフィン性炭素-水素結合よりも切断されやすいことを示唆する。さらにこの末端メチル基を他のアルキル基にかえると、β-水素脱離反応が起きジエン型でルテニウムに配位した錯体が得られた。この際、配位エチレンは水素化されエタンとして発生した。しかし、アクリル酸メチルとの反応では炭素-水素結合の活性化は起きず、π錯体と思われる錯体のみが生成した。これらの錯体は主にNMRにより同定した。 1、2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタンを配位子にもつ鉄(O)錯体を触媒とするクロトン酸エステルやクロトノニトリルの高選択的2量化反応を見いだした。これらの触媒反応は常温で約1モル%の触媒があれば十分進行する(収率90%、選択率95%)。遊離の1、2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタンの添加により著しく阻害されることから、系中で生成する鉄(O)配位不飽和種へのオレフィン性の炭素-水素結合の酸化的付加を含む機構で進行しているものと推定した。
|