選択性の高い活性種を生成させ、この反応性を制御することは、現代の有機合成の課題である。この為の有力な方法に、電極酸化による活性種の生成がある。本研究では、各種のスルフィド類を一電子酸化してカチオンラジカルを発生させ、反応を制御しようとするものである。 スルフィド類をメタノ-ル中で電極酸化すると、α-プロトンの脱離によるα-メトキシ化反応と、C-S結合の開裂反応が競争的に進行することが判明した。その割合は置換基によって異なる。電子吸引性の置換基により酸性度が高くなればα-プロトンの脱離が主反応となり、α-官能基化が出来る。このα-プロトンの脱離過程は、スルフィドカチオンラジカルの酸性度と相関するはずである。この酸性度を求めるため、α-カルバニオン種の酸化電位の測定を試みたが、カルバニオンが不安定のため測定できなかった。今後、メデエ-タ-を用いる間接電解還元の方法により試みる予定である。 他方、C-S開裂反応は、安定なカルベニウムイオンを生成する場合に主反応となる。例えば、p-メトキシベンジル基の場合である。また、α-水素をもたない三級炭素では、C-S結合が開裂し、メトキシ置換反応が起こる。 以上の知見に基き、合成的に有用な反応系に適用する予定である。
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