研究概要 |
前年度にホオズキの地上部の熱湯抽出液のクロロホルム抽出物より単離してフィサリンPと命名した化合物の構造を、各種スペクトルデ-タによって検討した。 ^<13>CーNMRスペククトルで1個のケトンと3個のラクトンの存在が示され、ネオフィサリン骨格を持つことが推定されたが、4,7ーデヒドロネオフィサリンB(1)との比較によってフィサリンPは1ときわめて類似した化合物で、その構造を5αーヒドロキシー6,7ーデヒドロー5,6ージヒドロネオフィサリンBと推定した。水酸基の立体配置は、CDスペクトルのA/B環トランスを示す334nmの負のコットン効果によって決定した。フィサリンPの酸処理脱水反応により1が生成することによってその推定構造の正しいことを確認した。 ホオズキの新しい抽出方法として、乾燥植物をヘキサンで脱脂後クロロホルム抽出を行った。抽出物は多量の葉緑素を含み精製が困難であったが、フィサリンBおよびフィサリンFを多量に単離することができた。さらに新しいフィサリン類の単離を目指して精製を行っている。 フィサリンBはシリカゲル触媒によって異性化してフィサリンCを与えることを見出し、他のフィサリン類の異性化反応も検討中である。 フィサリン類の構造と抗腫瘍活性の相関について検討を行った結果、i)A環の共役エノン部分が活性発現に必須であること、ii)AB環部にβー配置の水酸基、メトキシ基、エポキシド環は活性を低下させ、αー配置の水酸基、エポキシ基は活性を損なわないことを明らかにした。これらの知見より、フィサリンAの7位のエピマ-に高い活性が期待され、フィサリンAより7ーエピフィサリンAへの誘導を試みているが成功していない。また、6員環共役ケトンと不飽和δーラクトンを分子内に含むセスキテルペン様化合物ミニフィサリンを、高抗腫瘍活性化合物としてデザインし、その合成研究を検討中である。
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