研究概要 |
日本産ホオズキの熱湯抽出液をクロロホルム抽出することにより粗製のフィサリンを得て、その成分検索を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィ-と再結晶を繰り返することにより新たなフィサリン2種類を単離して、それぞれフィサリンNおよびフィサリンOと命名した。^1Hおよび^<13>C核磁気共鳴スペクトルの解析と質量分析によってフィサリンNの構造を7αーヒドロキシフィサリンBと推定した。またフィサリンOの構造を(25S)ー25、27ージヒドロフィサリンAと推定し、化学反応による既知化合物への誘導として、接触還元反応によりデオキシヘキサヒドロフィサリンAを得、また酸処理脱水反応によって得られた共役トリエノン化合物はフィサリンLの脱水生成物デヒドロフィサリンMと一致することを確認した。さらに粗製フィサリン中より新たにフィサリンPを単離して、その^<13>CーNMRスペクトルよりネオフィサリン骨格を持つと推定した。^1HーNMRスペクトルの検討よりその構造を5ーヒドロキシー6,7ーデヒドロー5,6ージヒドロネオフィサリンBと推定し、水酸基の立体配置はCDスペクトルよりαー配置とした。既知化合物への誘導として酸処理脱水反応を行ない、期待通り4,7ーデヒドロネオフィサリンBを得た。 フィサリン類の構造と抗腫瘍活性の相関について検討を行った結果、i)A環の共役エノン部分が活性発現に必須であること、ii)AB環部にβー配置の水酸基、メトキシ基、エポキシド環は活性を低下させ、αー配置の水酸基、エポキシ基は活性を損なわないことを明らかにした。これらの知見より、フィサリンAの7位のエピマ-に高い活性が期待され、フィサリンAより7ーエピフィサリンAへの誘導を試みているが成功していない。また、6員環共役ケトンと不飽和8ーラクトンを分子内に含むセスキテルペン様化合物ミニフィサリンを高抗腫瘍活性化合物としてデザインし、その合成研究を検討中である。
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