1)臭化トリフルオロメチルとカルコゲニドアニオンとの反応による、トリフルオロメチル化 臭化トリフルオロメチルをセレニドアニオンと反応させると、一電子移動を起こし、トリフルオロメチルラジカルが生成する。CF_3・ラジカルはオレフィンに付加し、中間体ラジカルがセレニドアニオンと反応して、アニオンラジカルを経て、最終的にハロゲン化アルキルへと連鎖移動する。CF_3Brとの反応で30%の収率だが、トリフルオロメチルセレンが可能となった。本反応は、一般のヨウ化ペルフルオロアルキル化に応用できる。末端オレフィン、ビニルエ-テル、ビニルスルフィドに有効である。対応するセレニドとの反応はセレンに比べ反応速度はやや遅いが、収率はビニルエ-テルで80〜90%となり満足いく結果であった。この反応系に5〜10%モル当量のセレニドを加えると、反応は速くなり、単独では反応しない。Pーニトロチオフェノ-ルも反応する。従って、イオウーセレン系では、セレニドからの電子移動で反応が開始し、チオ-ルへと連鎖移動していることになり、セレニドを触媒とする、トリフルオロメチルースルフェニル化反応が実現できた。一方、テルリドイオンを用いると、-40℃付近でも、電子移動が起こることが確認でき、極低温での電子移動反応を構築できる可能性が開かれた。 2)電解トリフルオロメチル化反応 トリフルオロ酢酸を電解酸化して調製した、CF_3・ラジカルを酸素存在下で反応させると、例えば、アクリル酸ブチルの3ー位にCF_3基を、2位に水酸基又はカルボニル基を導入できる新規反応を見い出した。本反応は、CF_3・ラジカルとの反応で生成した、αーカルボアルコキシラジカルが酸素と反応し、脱水反応を経て、αーカルボニル化が進んだものと考えられる。
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