1.本研究の課題の一つである糖質誘導体を基質として用いるクライゼン転位反応に関しては、既に1、2位の水酸基がアルファ型にイソプロピリデンケタ-ル化されたフラノ-ス誘導体数種を用い、高立体選択的かつ高収率の炭素-炭素結合形成反応の開発に成功している。今回は、純粋なエナンチオマ-としての合成素子(キロン)の開発を目的として、フラノ-ス構造をとるD-グルコ-ス誘導体(1、2-O-イソプロピリデン化された二環性骨格)の3位にメチル基を導入し、ついで5位をアリルアルコ-ル側鎖へと変換した化合物を合成し、そのものを基質としたトリエチルオルトアセタ-トとの熱的クライゼン転位反応について検討した。その結果、Z型アリルアルコ-ル誘導体を用いた場合に反応は高立体選択的に進行しジアステレオマ-比8:1にて転位成績体を与えた。また、それらの立体配置に関しては科学変換等の手法を用い明確にする事ができた。なお、E-型アリルアルコ-ルを用いた場合には立体選択性が観測されなかった。こうして効果的に得られた主転位成績体は1、3-ジアルキル-2、4-ジオ-ル構造を骨格中に含むことより天然物合成等の合成素子としての利用が期待される。(この結果はThe Journal of Organic Chemistryに投稿中) 2.D-グルコ-スより誘導される基質とトリエチルオルトプロピオナ-トとのクライゼン転位反応にて、高立体選択的に得られる、不斉四級炭素原子に隣接してメチル基が導入された転位成績体を出発物質とする抗生物質(-)-アセトマイシンの全合成が達成された。本全合成の過程で異なる酸化状態の官能基(メチルケトン、ラクトン、ヘミアセタ-ル)を効率良く導入する新規な方法が開発されたとともに、天然のエナンチオマ-として(-)-アセトマイシンが初めて全合成された。なお、この全合成の過程で天然物中に存在する不斉炭素原子の立体配置の一つが異なる(+)-5-エピアセトマイシンもあわせて合成された。この5-エピ体の薬理活性に関しても検討する予定である。(この結果はTetrahedron Lettersに投稿中)
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