酢酸菌のセルロ-ス生合成に関与する遺伝子の解析とクロ-ニング

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01550683
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 高井 光男 北海道大学, 工学部, 助教授 (50002019)
• 研究分担者: 藤原 政司 北海道大学, 工学部, 助手 (30229075) ; 清水 祐一 北海道大学, 工学部, 助手 (80142694) ; 林 治助 北海道大学, 工学部, 教授 (10001182)
• キーワード: 酢酸菌 / セルロ-ス / 生合成 / ロイシン合成遺伝子 / クロ-ニング / ビオチン / サザンハイブリダイゼ-ション / 形貭転換

研究概要

セルロ-ス産生酢酸菌Acetobacter xylinum ATCC 10245のゲノムDNAをMarmur法により分離・精製した。ゲノムDNAを制限酵素BamHI、SalIにより切断し生成した断片を、同じ制限酵素で切断したベクタ-DNA pUL1とT4 DNAガ-ゼを用い連結した。作成した組換えDNAを、Hanahan法によりコンピテントな状態にしたロイシン要求性(Leuー)の宿主大腸菌Escherichia coli C600に導入させた。ロイシンを含まないM9最少培地上で培養し、現われたロイシン非要求性(Leu+)の形質転換体が保有するプラスミドDNAを解析した。
制限酵素BamHIを用いて作成した組換えDNA試料をロイシン要求性の大腸菌に導入したところ、ロイシン非要求性の形質転換体が現われた。その形質転換体が保有する9.2kbのサイズのプラスミドDNAは、ベクタ-DNAのpUC18(2.7kb)が6.5kbの挿入断片を組み込んだものだった。このプラスミドDNAをロイシン要求性の大腸菌に再導入すると、ロイシン非要求性の形質転換体が多数現われた。これらのことから、この9.2kbのサイズのプラスミドDNAはロイシン合成遺伝子を組み込んでいる可能性が高いと思われ、pUL1と命名した。次に、種々の制限酵素による単一切断を行い、pUL1の切断性を調べた。その結果に基づき、pUL1を何種類かの制限酵素により二重切断を行い、これらの酵素の切断部位の相対位置を求めた。以上の結果から、pUL1の制限酵素地図を決定した。さらに、pUL1の6.5kbの挿入断片上のロイシン合成遺伝子領域を特定化するため、挿入断片を切断する制限酵素AvaI、HindIII、MluIを用いpUL1を小型化したプラスミドDNAを作成し、その形質転換性を調べた。得られた形質転換体が保有していたプラスミドDNAの中で最も小さいプラスミドDNA pULH1の結果より、pUL1のマルチクロ-ニングサイトの制限酵素EcoRI切断部位より下流側1.15kbの領域の押入断片上にロイシン合成遺伝子が存在することが示された。最後にこの挿入断片の由来を確認するため、ビオチン化したpUL1をDNAプロ-ブとして用い、サザンハイブリダイゼ-ションを行った。得られた結果から、この挿入断片が酢酸菌Acetobacter xylinum ATCC 10245由来であることを確認できた。

研究成果

• [文献書誌] 星野 正和: " ^<13>CーNMR Study of Cellulose Derivatives in the Solid State" J.Polym.Sci.,PartA:Polym.Chem.27. 2083-2092 (1989)
• [文献書誌] 林 治助: "Two kinds of ^<13>C NMR Spectra for Cellulose I" Cellulose,structural and functional aspects(Ellis Horwood Publisbers). 119-130 (1989)
• [文献書誌] 藤原 政司: "Construction of Shuttle Vectors andA Genetic Transformation system for celluloseーProducing Bacteria Acctobacter xylinum" Cellulose,structural and functional aspects(Ellis Horwood Publisbers). 153-158 (1989)
• [文献書誌] 高井 光男: "バイオセルロ-スの科学と応用" 高分子加工. 38. 475-481 (1989)
• [文献書誌] 高井 光男: "Filtration and Permeation Characteristics of Bacterial Cellulose Composite" 繊維学会誌. 47. (1991)
• [文献書誌] 清水 祐一: "Acetylation of Cellulose with Carboxylic Acids" Cellulose Chem.Technol.23. 661-670 (1989)
• [文献書誌] 高井 光男: "分解性プラスチック(分担執筆,監修:土肥義治)“バイオセルロ-ス"" CMC(シ-エムシ-), 276 (1990)