本研究では、LB法を用いることにより、高分子単分子膜をnmオ-ダ-で積層、多層化して高次構造の規制された高分子薄膜を作成している。その構造評価に蛍光法を応用し、高分子累積膜における内部構造、分子分散性、高分子主鎖の配向性などを調べた。初年度における研究の主な部分は高分子累積膜の合成、累積技術の確立、さらに膜中での分子分散性や層構造の評価である。具体的に行った項目は以下の通りである。 1.累積性高分子の探索と光機能化:単分子層膜としての累積可能な高分子を探索し、これらの中から系統的に分子構造を修飾できるセルロ-ス系、PVA系、MMA系高分子を研究対象とした。合成ならびにその蛍光ラベル化を行い、分子構造変化による物性値と累積性を調べ本研究の基礎デ-タを得た。 2.蛍光ラベルによる分子分散状態の研究:LB膜でよく見られる色素会合は分子擬集性を利用したこのような膜形成には避け難い性質であるが、高分子累積膜の場合には低分子LB膜とはまったく異なった均一分散性が示された。ピレンを蛍光プロ-ブとしてラベルし、この分散性をエキシマ-形成能により定量的に明らかにした。 3.高分子累積膜における層構造、ならびにその安定性評価:高分子累積膜の特徴の一つは構造安定性にある。作成した累積膜の層構造を蛍光法により確認するとともに、その熱的、時間的安定性を明示した。 4.蛍光法による高分子鎖の配向性評価:単分子層膜という微小な領域における構造評価には極めて高感度な測定手段が要求される。蛍光法が高感度かつ偏光性を利用すれば分子配向性を知る有力な手法であることを示すとともに、蛍光ラベル化された高分子累積膜での異方性配向を明らかにした。
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