研究概要 |
1.圧電性とは高分子膜に機械的刺激(力、歪)が加えられたとき、膜表面に電荷が生じる現象である。ポリヒドロキシブチレ-ト(PHB)に代表される生体吸収性高分子に大きなずり及び曲げ圧電効果がある事が近年代表者に依って発見された。このような生体吸収性圧電高分子により電気分極を骨折治療に応用するために、1、曲げ圧電査の定量的測定、2、生体環境下における評価、3、表面処理による生体吸収性の評価の測定を行い検討した。 2.PHBのずり圧電率は常温において3-4pC/Nでありこれは幅10mm,長さ20mm、厚さ0.05の試料に1gの重りをつけたとき約1Vの電圧を生ずる事になる。また曲げ圧電率は1-2x10^<-18>Cm/Nであり、これは試料支持端より1cmで1mmの変位を与えたとき約0.2Vの電圧を生じる事が見いだされた。また相対湿度100%下での水分率は0.6%と極めて小さく、圧電率も約5%程度の低下であり水分の影響は小さい事がわかった。また曲げ圧電率の異方性では分子鎖方向の曲げと、それに垂直方向とでは約2倍の違いがある事、最大値を示すのは、分子鎖方向より約20度ずれるという興味ぶかい結果がえられた。生体吸収性の評価は土中に試料を埋入し、その重量の経時変化により評価を行った。その結果PHB及びその共重合体では約6-7週目より分解が生じ(冬季)、コロナ放電した試料の方が未処理試料に較べて分解速度が早くなる事、ブレンドにより吸収速度がある程度制御可能となる事が明らかとなった。結論として、骨折部位にPHB膜を埋入したとき、動物の運動により試料は伸び、曲げ歪などの複雑な変形を受け、それにともなう圧電電流が流れ増骨細胞の活性化が起こされる。このとき発生する分極量は生体外で測定される値とほぼ同じである事生分解性はブレンド,コロナ放電により制御可能である事が明らかとなった。これらの結果の一部は平成2年度織維学会秋季研究発表会において報告する予定である。
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