本研究では汎用高分子材料、ポリオレフィンおよびセルロ-ス、へ機能性付与の手段として光グラフト重合を適用し、グラフト体の構造制御により多彩な機能の発現を図ることを目的とした。平成2年度は平成元年度におけるポリエチレン(PE)フィルムを中心とした検討結果にもとずいて、グラフト鎖分布の異なるグラフトPEフィルムを合成し、グラフト鎖の分布状態と機能との関係を検討し、以下の成果を得た。 1.液相および気相系で合成した4ービニルピリジングラフトPEフィルムについて、pーニトロフェニルアセテ-トの加水分解に対する触媒活性を検討した結果、気相試料に比べて液相試料の方が高い触媒活性を与えることが認められた。同様の結果がNービニルイミダゾ-ルグラフトPEフィルムによるpーニトロフェニルアセテ-トの加水分解においても認められた。平成元年度の検討から、液相試料では気相試料に比べてグラフト鎖はフィルム表面に局在して分布する傾向が認められており、このようなグラフト鎖分布の特性がグラフト試料の触媒活性に反映されたものと思われる。 2.PEフィルムを用いた結果をセルロ-スへ応用した。すなわち、液相および気相系でグリシジルメタクリレ-トグラフトセルロ-スを合成し、次いでこれらグラフトセルロ-スをジアミン類(エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン)と反応させてアミノ基含有セルロ-スを調製した。アミノ基含有セルロ-スについて銅イオンの吸着性能を調べた結果、液相試料と気相試料の銅イオン吸着量には大きな差異のないことが認められた。このように、光グラフトセルロ-スの機能はグラフト鎖の分布状態に大きく左右されないことがわかった。光グラフトセルロ-スにおけるグラフト鎖分布についてはさらに検討が必要であると思われる。
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