研究概要 |
1.スチレン(St)/無水マレイン酸(MnA)交互共重合体にDMF中フェロセニルメタノ-ルを反応させ、22mol%フェロセン(Fc)導入ポリマ-を合成し、グラシイ-カ-ボン電極上へキャストした膜の電気化学的特性をサイクリックボルタンメトリ-により検討した。電位走査によりMAn残基が開環し、膜構造が平衡状態となるに伴って酸化、還元両ピ-クの負へのシフトならびにFc会合体に起因するピ-クの消失が観測された。一方、キャスト時に架橋剤を添加すると膜構造の固定化から会合体ピ-クが観測され続けることが明らかとなった。 2.ビニルフェロセン(VFc)とMAnとの交互共重合体膜も同様の膜構造変化に伴うピ-クのシフトを示すが、Fc会合体に起因するピ-クは観測されない。また、架橋膜では、架橋度の増加に伴い同一pHでのピ-ク電位(しいては酸化還元電位)の正へのシフトならびにピ-ク電流の増大が観測された。酸化還元電位は、マレイン酸残基のpK_1、pK_2に対応するpH2〜5で大きく変化し、pHによるメディエ-タ-機能のpH制御が示された。 3.St/4-メチル-4'-ビニル-2,2'-ビピリジン/MAn共重合体にn-ブタノ-ル/キシレン中Ru(bpy)_2Cl_2を反応させて得た2〜12mol%Ru(bpy)_3^<2+>導入ポリマ-のキャスト膜はRu(bpy)_3^<2+>錯体特有の酸化、還元ピ-クを与え、また、電子受容体メチルビオロ-ゲン(MV^<2+>)、電子供与体トリエタノ-ルアミンを添加し光照射したところMV^<2+>の還元体(MV^+)の生成が確認された。同ポリマ-ならびにMV^<2+>を導入したポリマ-をそれぞれSt/MAn共重合体と1:1でブレンドしたものの積層膜における膜内電子移動も同様に進行することが確認された。以上、明、暗両条件下でのFc、Ru(bpy)_3^<2+>含有St/MAn系ポリマ-膜の酸化還元特性を明らかにした。今後は、これらの積層膜における膜酸化還元反応系の構築を試みる。
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