研究概要 |
高分子の基本的な性質は、分子量できまる。酵素や遺伝子のような特異機能を有する生体高分子はある特定の定まった分子量を有しており,分子量に関するばらつきは全く存在しない。しかし,合成高分子の分子量は一般にふぞろいであり,このことは,高度な機能を有する高分子材料を設計する上において重大な問題である。 本研究は,機能性高分子材料として期待される含イオウ高分子を分子量のそろった形で合成することを目的としており,本年度は,含イオウモノマ-であるエピスルフィドと含酸素モノマ-であるエポキシドの共重合反応による新しい高分子材料の合成を試みた。 これら2種のモノマ-は,一般に前者が後者に比べてはるかに高い重合性を有しているために,これまで共重合に関する成功例はなかった。これに対して,本研究では,右図のNーメチルポルフィリンの亜鉛錯体を重合開始剤とし,可視光を照射することにより,これら2種のモノマ-の共重合体をはじめて合成することに成功した。さらに,適当な条件下では,共重合体が分子量のよくそろった形で生成することもわかった。 本研究で得られた成果は新しい含イオウ高分子の合成という点に加え,光により共重合しにくいモノマ-同士の共重合に成功したはじめての例であり,学術的にも極めて興味深いものである。
|