オリゴ糖鎖をもつ細胞認識高分子の機能設計

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01550715
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 小林 一清 名古屋大学, 農学部, 助教授 (10023483)
• 研究分担者: 岡田 鉦彦 名古屋大学, 農学部, 教授 (20023103)
• キーワード: 生体機能材料 / 糖質工学 / 分子認識 / 開環重合 / 合成多糖 / オリゴ糖 / 糖質高分子 / 細胞特異性材料

研究概要

細胞における複合多糖の機能の解明が進むにつれて、分子認識・細胞認識機能物質としてのオリゴ糖や多糖の重要性が注目されている。オリゴ糖や多糖の、分子認識・細胞認識に基づく精妙な分子生体機能の本質を、分子レベルあるいは細胞レベルで解明することや、その基盤に立って、新しい生医学材料や生理・薬理活性物質を創出することは、緊急かつ重要な研究課題である。すでに、ラクト-スを側鎖にもつポリスチレンが、肝細胞とガラクト-ス特異的な相互作用を発現することによって、その培養材料として優れた特性をもつことを明らかにした。本研究ではさらに、ガラクト-ス、マンノ-ス、およびNーアセチルグルコサミンを細胞認識糖鎖として活かして、高分子物質の機能デザインの展開を図ってきた。本年度は次の3項目の新規細胞特異性高分子材料を開発した。
1 1,6ーアンヒドロガラクト-ス誘導体のカチオン開環重合に隣接基関与を応用して、(1→6)ーβーDーガラクトピラナンの合成に成功した。モノマ-反応性の向上と高分子量重合体の合成を試みた。生成物は、モノクロナ-ル抗体と反応して興味深い機能を発現することが期待される。
2 両親媒性の星型グラフト糖質重合体をマクロモノマ-法により合成した。βーメルカプトプロピオン酸をテロゲンとして用いて、新規糖質ビニル化合物であるグルコ-ス=エチルメタクリレ-トのテロマ-化を行った。末端のカルボキシル基をpービニルベンジルアミンで処理して、マクロマ-を調製し、その単独重合を行った。
3 ラクト-ス置換スチレンモノマ-のテロメル化とHPLC分析により、およそ1から10の重合度からなるオリゴマ-を調製した。アシアロ糖タンパク質レセプタ-との相互作用を詳細に調べるためのモデルとなる。

研究成果

• [文献書誌] 赤池 敏宏: "オリゴ糖置換ポリスチレンへの肝細胞の接着" 日本農芸化学会誌. 64. 145-150 (1990)
• [文献書誌] 小林 一清: "新しい血小板粘着阻止材料の分子設計" 化学工業. 41. 312-315 (1990)
• [文献書誌] 小林 一清: "糖質工学と生体機能材料" 化学と生物. 28. 258-266 (1990)
• [文献書誌] 小林 一清: "糖質高分子を基質材料に用いる肝細胞接着と糖鎖高密度効果の発現" Trends in Glycoscience & Glycotechnology. 2. 26-32 (1990)
• [文献書誌] A.Hirai: "CP/MAS 13C NMR Study of Linear Dextran Crystallized from Poly(ethylene Glycol)ーwater Solution at a High Temperature" Macromolecules. 23. 1837-1841 (1990)
• [文献書誌] H.Ichikawa: "Synthesis of a Combーshaped Branched Polysaccharide via RingーOpening Polymerization of a Reactive Anhydro Disaccharide Derivative" Macromolecules. 23. 1884-1886 (1990)
• [文献書誌] K.Kobayashi: "StructureーControlled Synthesis of Specialty Polysaccharides" Preceedings of the ACS division. 62. 477-481 (1990)
• [文献書誌] 高山 崇: "糖側鎖を有するポリスチレン誘導体の抗血小板粘着作用" 生体材料. 8. 122-128 (1990)
• [文献書誌] K.Kobayashi: "Regioselectively Modified Stereoregular Polysaccharides.II.Synthesis and Functions of(1→6)ーαーDーGlucopyranans Having One Long Hydrocarbon Chains in Position 3 in Each Repeating Unit" Macromolecules. 23. 3808-3710 (1990)
• [文献書誌] K.Kobayashi: "Synthesis of an NーAcetylchito OligosaccharideーCarrying StyreneーType Macromer and Its Homopolymer" Makromol.Chem.,Rapid Commun.11. (1990)
• [文献書誌] 小林 一清: "ラクト-ス誘導体を側鎖にもつポリペプチド" 高分子論文集(生体機能材料特集号). (1991)
• [文献書誌] 小林 一清: "長鎖アルキル基をもつ多糖の合成と機能" 油化学(「糖脂質」小特集). (1991)
• [文献書誌] K.Kobayashi: "Polymer Year Book" Gordon and Breach Science Publishers,Inc., 6 (1990)
• [文献書誌] K.Kobayashi: "Polymer Year Book" Gordon and Breach Science Publishers,Inc., (1990)
• [文献書誌] K.Kobayashi: "Polymer Year Book" Gordon and Breach Science Publishers,Inc., (1991)
• [文献書誌] K.Kobayashi: "Polymers from Biotechnologh" Plenum, (1991)
• [文献書誌] 小林 一清: "「接着剤の分子設計」" 日本接着学会,