(1)3つの新しいシリルジエニルエ-テル[CH_2=C(R)-CH=CH-O-Si(CH_3)_3、I:R=H、II:R=CH_3、III:C_6H_5]を合成し、それらのアルド-ル縮合型官能基転移重合(GTP)を研究した。その結果、設計値に近い数平均分子量を有し分子量分布も狭いポリマ-をほぼ定量的に得るには、開始剤にはpーアニスアルデヒドが迅速開始となって有利である事、触媒では分子量制御の程度とゲル化等の副反応が無く重合後の除去も容易な点を勘案して臭化亜鉛が最も優れている事を明らかにした。はた溶媒にジエチルエ-テルを加えると均一系GTPも可能であった。 (2)BdTMS(I)の重合挙動をNMRで追跡して速度論解析を行った結果、開始および成長の両反応とも律速段階は開始剤と成長末瑞にあるホルミル基がルイス酸触媒に配位してカチオン化する過程である事、臭化亜鉛触媒を用いた不均一系での開始反応は成長の約3倍の速度定数をもつ事などを明らかにした。またジエチルエ-テルを加えた均一系での重合速度式はR=kp[開始剤][触媒][モノマ-]^2で表されると判った。 (3)IIのGTPは、正常の成長以外に分子内脱シリル化(環状エ-テルの形成)を伴うけれども、分子量分布は狭い(Mw/Mn=1.14)ポリマ-を与えた。一方幾何異性体の混合したIII(E:Z=54:46)ではE体のみがGTPに対応できて、[M_E/I]。からの計算値と合致するMnをもちMw/Mn〓1.2のポリマ-を与えるが、Z体は分子量制御の働かない別機構による遅い重合が起きた。これからGTPの遷移状態での立体効果を論考した。 (4)P(BdTMS)の完全な脱シリル化、P(BdTMS)および脱シリル化物の接触還元、あるいはアセチル化等の高分子反応を試み、各反応で選択すべき適正な触媒や反応条件を確立した。ただしガラス転移温度等の物性を調べるには高分子量(100量体以上)の母体試料が必要で、その試料の合成がまだ完全に解決されぬ課題として残った。
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