平成1年度、セラチアプロテア-ゼを用いるモデルペプチド合成において、Arg‐Leu結合の生成収率は高いが、Arg‐Gly結合生成収率は低いこと等から、SPが配列特異的にペプチド結合生成を触媒することを発見した。平成2年度は、本プロテア-ゼを長鎖ポリペプチド合成に応用するための基礎実験として、高選択性のArg‐Leuおよび低選択性のArg‐Gly両結合を含むモデルペプチドBz‐Gly‐Arg‐Gly‐Phe‐Arg‐Leu‐NH_2のArg‐Leu結合生成触媒による合成を試みた。結果、目的のペプチドを得ることはできなかったことより、如何に高特異的なプロテア-ゼを触媒として使用しても、加水分解反応を抑えることは不可能であるとの結論に達した。 ペプチド性ホルモン製造のためには、量的合成に応用可能な高効率合成法の確立が必要である。そこで、ペプチド結合生成の好触媒であるトリプシンを用い、低含水量においてもプロテア-ゼを失活させず高収率にペプチドを生成可能な優れた溶媒系の検索を行なった。その結果、4%H_2O/ヘキサフルオロイソプロピルアルコ-ル/ジメチルホルムアミド(1:1)混合溶媒中において、83%の収率でArg含有テトラペプチドを得た。次に、オキシム樹脂を用いた高収率保護ペプチドフラグメント合成と最終工程に本混合溶媒中でのトリプシン縮合法を組み合わせた方法をヒト成長ホルモン放出因子の活性フラグメント(hGRF(1‐29)‐NH_2)の合成に応用した。トリプシン触媒により90%の収率で保護hGRF(1‐29)‐NH_2を合成可能であった。脱保護の後、高純度のhGRE(1‐29)‐NH_2を得た。SPによる高効率合成は困難であったが、優れた溶媒系およびトリプシンによる高効率合成法の確立を行なうことができた。
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