酵素がその活性を示すに必要な金属を含む場合、同じ金属を含む高分子に酵素が固定された場合、如何に活性が増大するかをアスコルビン酸オキシダ-ゼ/銅キレ-ト・銅塩含有高分子系について明らかにするために本研究を行った。また酵素センサと膜電位との関連ずけを行った。まずポリ塩化ビニルにキレ-ト形成性親水性基であるNーメチルーNーカルボキシメチルジチオカルバマ-ト基を導入し金属錯体形成性の高分子素材とした。これらの高分子にアスコルビン酸オキシダ-ゼを固定したLーアスコルビン酸に対するセンサ機能は膜内の酸素拡散性がの低下したため、見かけ上、応答性は塩構造のポリマ-の方が高かった。また、キレ-ト系では膜内に遊離のCu^<2+>が存在すると思われ、膜に金属イオンを含有させるかわりに、センサ外部溶液に金属イオンを添加することで、逆に酵素のアスコルビン酸に対する応答性・活性が評価できた。また、スピンキャスト法により調製したクロルメチル化したポリーγーメチルーLーグルタマ-トの薄膜およびこの膜の第4級アンモニウム塩化した膜にこの酵素を固定した。ついで、多孔質膜と複合膜としセンサ機能を調べた。この結果、アスコルビン酸に対し1.0x10^<ー6>〜1x10^<ー2>mol・dm^<ー3>の濃度範囲で検出可能であり、耐久性にもすぐれたセンサ膜であることを明らかにした。 また、スピンキャスト法によりアスコルビン酸オキシダ-ゼとグルコ-スオキシダ-ゼを固定化した酵素膜を調製し、複数基質認識酵素センサを作成した。基質注入時からの測定時間と応答電流をマイクロプロセッサにより解析し、定常電流値が得られるまでの波形から2成分基質濃度を一つのセンサから同時定量を行うことを試み成功した。膜電位の変化から、固定化酵素膜の基質認識性を検討した。本研究で開発した膜電位理論から求めた膜電位応答値は実験結果をよく説明した。
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