研究概要 |
ダンボ-ル用紙のフィラ-には紙の繊維と馴染み易い長細い形状,食料のフィラ-には舌にさわらない球状のものといったように,無機フィラ-には基材に馴染み易く,基材のもつ欠点を補う性質が要求される。そこで,本研究では三相反応器を用いて炭酸カルシウムを生成させる系を用いて各種の形状粒子を形成させる手法を明らかにする。 装置は内径90mm,高さ400mmのアクリル製二重円管管で,分散板としては直径1mmの穴を多数あけた多孔板を用いた。所定濃度の水酸化カルシウム反応液1.5lを投入し,下部より二酸化炭素を窒素で希釈して吹き込んだ。二重管外套部に温水を流して反応器の温度を一定に保った。生成粒子は装置中央部よりサンプリングしたが,サンプリング後の変化を抑制するため,SEM観察用は多量のアセトン中に分散させ,乾燥試料は抑制剤としてエチレンジアミンテトラメチルホスホン酸を加えた後に,ろ過,洗浄,乾燥した。また反応液のpH値および温度はそれぞれpH計,熱電対で測定した。 二酸化炭素のガス流量と濃度は,炭酸イオンの液中供給速度を決定すると考えられる重要な操作因子であるが,中でも流量が炭酸カルシウム生成条件を支配することが明らかになった。そして横軸に水酸化カルシウム濃度,縦軸に二酸化炭素流量をとることで,粒子形状が菱面体から次第に丸みのある形状,そして細長い粒子となっていく変化をマップにまとめることができた。この粒子は全てカルサイトであり,形状の変化は結晶形の違いではないこともX線解析で確認された。 反応に伴うpHの変化を追うと複雑な軌跡を示す。変化に対応する試料のX線解析から反応初期には非晶質な粒子が生成されること,およびpH降下の値が大きい程,生成する粒子のアスペクト比が大きいことから,水酸化カルシウム濃度が形状に大きく関与するといえる。
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