研究概要 |
シミュレ-ションをもとにシステムの運用計画を立案・検討する際最も重要なことは、シミュレ-ションモデルが対象システムがとり得るすべての操業方策を表現していること、およびそれぞれの操業方策が採用されたときシミュレ-ションによってシステムの挙動が正しく再現できることにある。このような観点から、筆者らはまず始めにバッチプロセスに代表される離散事象系の制御問題(バッチプロセス装置・資源の割り当て問題、製品の生産順序決定問題など)が非決定性の問題に帰着できること、および離散事象系のモデルとしてこの非決定性を陽に表し非決定性の解消に関する考察に十分耐えるモデルが望ましいことを明らかにした。そしてこの知見に基づき、バッチプロセスの運用計画検討に供することができるような1つの離散事象系モデルを提案した、このモデルは,対象システムの挙動をシステムの状態とそれを変化させる事象の集合としてとらえるものであり、ペトリネットにその基礎を置くのである。また、このモデルのもとで離散事象系が本来もつ基本性質(非決定性、並行性、同期性など)に関する諸概念を定義し、これらを解析するための手法について考察を行った(成果は研究発表の項参照)。提案したモデルは時間の概念を導入することによってシミュレ-ションモデルとしても利用できるものであり、その妥当性についてはある製鋼プラントの操業問題にこれを適用することによって検討した。現在、このモデルのもとで動作するシミュレ-タを作成中であるが、これには、任意の時刻までシミュレ-ションを後戻りさせその時点から変更された運用計画に従ってシミュレ-ションが再開できる機能など、いくつかの運用計画立案・検討を支援する機能を付加する予定である。
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