研究概要 |
離散事象系の挙動は,事象の発生に関する逐次性,同期性,並行性,競合性によって特徴づけられる.したがって,あるモデルが広範なクラスの離散事象系の解析・設計に適用できるためには,それがこれらの特徴をそのままの形で表現するものでなければならない.このような観点から,昨年度,ペトリネットとオブジェクト指向を融合した1つの離散事象系モデルを提案した.このモデルは,オブジェクトとキュ-の2種類のノ-ドからなる2部有向グラフ,このグラフ上を流れるメッセ-ジ,およびメッセ-ジの流れ方を定めた遷移則からなるものであり,システムの状態はメッセ-ジの流れる様子によって表現しようとするものである. 今年度は,まず初めに,これに時間の概念を導入した1つの離散事象系シミュレ-ションモデルを考案した.このモデルは,オブジェクト固有の局所的時刻をもった各オブジェクトが時間の消費を伴うメッセ-ジパッシングを行いながらシステムの動的挙動を表現しようとするものである.そして,次にこのモデルのもとで動作するシミュレ-タを核とした離散事象系運用計画検討システムを開発した.運用計画を検討する手段としては,運用方策を変更しながらシミュレ-ションを繰り返し行うことが現実的であると思われる.したがって,システムの開発にあたっては,複数個の運用方策が考えられる場面で一旦シミュレ-ションを中断し利用者によって選択された代替の方策のもとでシミュレ-ションが再開できる機能,および任意の時点までシミュレ-ション過程が後戻りできる機能を付加した.そして,8個のオブジェクトと10個のキュ-によってモデル化されたある製鋼プロセスの操業計画問題にこれを適用し,所期の動作が得られることを確かめた.
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