研究概要 |
(1)酸素輸送担体の合成と評価:液膜による酸素富化空気の製造にとって最も重要なのは、高性能な担体の探索である。昨年度はCo(salpr)を合成した。この担体は酸素の選択輸送を示したが、不可逆酸化による劣化を示した。本年度はまず、Coー3MeOsalenの合成を行った。この担体はアクシャル塩基と共に用いた場合、選択輸送を示したが、Co(salpr)と比べて、膜透過速度も遅く、不可逆酸化の度合いも大きかった。次に、Coー3MeOsaltmenの合成を試みた。これに使用するアミン(2,3ーdimethylー2,3ーdiaminoーnーbutane)はニトロ化合物の還元によって合成しなければならない。曝発の危険性を避けるため、マイルドな条件でLiAlH_4を用いて還元反応を起こさせた。結果的に得られた担体は全く酸素の選択透過性を示さず、アミンの合成の段階で問題があったものと思われる。 (2)液膜による酸素富化空気の製造:結果的にCo(salpr)より高機能で安定な担体を得ることは出来なかったので、Co(salpr)を用いて、透過機構や安定性など酸素富化空気の製造プロセスの確立のために必要な検討を続けた。本年度は主として支持膜として、臨界表面張力の高いナイロン膜を使用した。溶媒の選択が重要であり、例えばホルムアミドの場合は、初期の分離係数は高かったが、劣化が大きかった。最も安定であったのはDMSOとγーブチロラクタンの混合物の場合であり、初期性能は他に比べて低いが2時間の操作でも比較的安定であった。また、工業繰作を考える場合に必要な液膜の再含浸による劣化防止の検討を行い、再含浸が有用であることが判明した。 2年間の研究の結果、残念ながら工業化に耐える製造プロセスの確立は未決着であり、今後担体の探索を含めて検討を続ける予定である。
|