研究概要 |
気液の臨界点近傍における高圧流体の挙動は臨界異常と呼ばれるほど特異な性質を呈することが知られている。この現象は分子集団の形成とその運動に基づく密度ゆらぎで定性的に説明される。このことは、従来から使われている分子場近似に基づく状態方程式にかわり,臨界流体の相挙動を表現するための新しい型の状態方程式の必要性を示している。臨界流体の特異性を明らかにし、その特徴を利用した技術開発の可能性を検討するのが本研究の目的である。 本研究はCHF_3,N_2O,C_3H_6各臨界流体の熱力学的物性のうち特に臨界温度,圧力,密度を正確に求めた。またスケ-リングした状態方程式に最適化二変数を導入することにより,複雑な状態式の簡便な使用方法を提出した。同時にイジングクラスの普遍性についても本方法を用いて考察した。 また純粋な臨界流体中に第2成分を微量添加した場合,新たに分子集団を形成し,臨界以上を示す領域が変化すると考えられるが,具体的にどのような相挙動を示すのかについて,ピラゾ-ルを添加剤としCO_2,C_2H_6の臨界挙動の推移を観察した。特にピラゾ-ル〜CO_2系の高圧側臨界終点付近での密度ゆらぎが非常に大きいことを確認した。 個体成分を含む臨界流体を急激に爆発させると流体が分子集団から瞬間的にストリッピングされるため,折出した超微粒子の観察から分子集団のサイズの関する情報を得る目的の実験を試行した。その結果約10nm程度の微粒子が得られたが,本実験法は高分子などの微粒子生成技術と関連して興味深い結果を得ることができた。
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