研究概要 |
1.アクリロイルアセトンをPonticello and Furmanの方法によって調製し、封管中でアゾビスイソブチロニトリルをラジカル開始剤として重合し、平均分子量が約10万のアクリロイルアセトンポリマ-(PAA)を得た。 2.PAA-二価の金属イオン[Cu(II),Co(II),Ni(II),Cd(II))]錯体の安定度定数を修正Bjerrum法に基づいて求めた。錯体の安定度の順位はCu(II)>Ni(II)>Co(II)>Cd(II)であり、Irwing-Williamsの序列と同じ傾向を示した。また、酸解離定数,pKa=10.9を得た。これはPAAのモデルモノマ-であるアセチルアセトンのそれに近い値である。PAAはアルカリ領域でのみ解離する傾向にあることが分かった。 3.バッチ法によって、金属イオンの吸着量の経時変化を求め、24時間後の吸着量から平衡吸着量を決定した。吸着平衡関係はLangmuirの吸着等温式で表わされることが分かった。このことはPAAによる金属イオンの吸着が化学吸着であることを示唆しており、吸着サイトの数、すなわち、β-ジケトン基の数が限られていることからも妥当なことと考えられる。何れの金属イオンについても吸着量は溶液のpHによって影響され、pHが高くなるにつれて吸着量も増加した。同じpHにおける吸着量の順は、Hg(II)>>Cu(II)>Ni(II)>Co(II)>Cd(II)であり、PAAはCd(II)やCo(II)よりもCu(II),Hg(II)をより選択的に吸着することが分かった。PAAを充填したカラムを用いて、金属イオンの分離と濃縮を検討した。pHの段階溶出によってCu(II)-Cd(II),Cu(II)-Co(II),Cu(II)-Ni(II)を分離することができた。しかし、吸着挙動が似ているCo(II)-Ni(II)を分離することはできなかった。吸着した金属イオンは量論的に小過剰量のHClによって溶離するので、濃縮が可能である。 4.PAAの吸着容量を増大させることが今後の重要な課題と考えられる。
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