研究概要 |
乱流運動の解析はその現象の複雑さのために、数値解析もふくめて、十分行われてきたとは言いがたい。しかし近年のス-パ-コンピュ-タ-の発達にともない乱流の直接数値計算も近似的には可能になりつつある。臨界レイノルズ数以下では乱流状態を維持することができない壁乱流に比較して、特にはっきりとした臨界レイノルズ数が存在しない自由せん断流では流体の運動はかなりの分部レイノルズ数に独立であり、特に大規模渦の運動がそうであるが、低レイノルズ数での乱流統計量は高レイノルズ数でも近似的に有効である。数値計算において現在とりうる格子幅は通常の乱流におけるKolmogorovのミクロスケ-ルに比較して相当大きい(1桁程度大きい)ので分解能を高くとれる低レイノルズ数の計算結果が有効となりうる自由せん断流の直接数値計算が有望である。しかしながらmixing layerやwakeを対象としたいくつかの計算例はあるが、自由噴流で、ノズル出口より十分遠方の乱流発達領域を含むものはみあたらない。またノズル出口近くの計算例においても実測値と比較したものはほとんどないようである。そこでスリットノズルから噴出する自由噴流の初期領域から乱流発達領域をふくんだ広い流れ場(X/D=0〜50,ただUXはノズル出口より軸方向距離,Dはノズル幅である)の直接数値計算を行った。その結果、格子幅はKolmogorovのミクロスケ-ルの約10倍だが、平均速度分布の計算結果は実験値をよく表現していること、また乱流特性値も大規模過が支配的な効果をもたらす、乱流速度のインテンシティ等は実験値を計算値はよくあらわすこと等を明らかにした。これは流れの形成に主要な役割をする大規模渦の発生やその運動を本計算がよくとらえているからで、現在のところ避け難い微小渦の省略が本計算手法による計算結果に大きな誤差をおよぼさず、本計算結果は自由乱流をほぼ定量的に表現していることを明らかにした。
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