近年、粒子設計という言葉が用いられてきていることからも分かるように、粉砕速度や粉砕機の消費エネルギ-ばかりでなく、粒子の表面状態の把握や制御が重要になってきた。そこでレ-ザ-ラマン分光光度計を用いて粉砕産物のラマンスペクトルを測定し、これに対する粉砕時間、粉砕条件の影響を粒度分布の変化と比較しながら検討した。 実験は、公転径が135mmの小型遊星型粉砕機に、内径41mm、内容積45cm^3のアルミナ製ミルを取り付け、直径15.7mmと1.8mmのアルミナ製ボ-ルを56g充填し、公転回転数440と730rpm(自転回転数は公転回転数と同一)の乾式で粉砕を行った。粉砕試料は平均径100μmの石英砂ならびに0.5μmの酸化チタンの2種類である。粉砕時間0、15、30、45分で粉砕産物を取り出し、そのラマンスペクトルを測定し、表面構造がどのように変化してゆくかを測定した。また、比較のため遠心沈降法で粉砕産物の粒度分布も測定した。 その結果、いずれの試料、粉砕条件についても粒度分布は粉砕時間15分までは大きく変化するものの、それ以上粉砕してもほとんど変化がなく、粉砕限界に達して粒子が小さくならないことが分かった。それに対して測定したレ-ザ-ラマンスペクトルのピ-ク(石英砂ではラマンシフト207、356、464cm^<-1>、酸化チタンでは400、517、640cm^<-1>)の高さは、どれについても、ボ-ル径が1.8mmの酸化チタンの場合を除き、粉砕時間45分まで連続的に減少することが分かった。これは粒子径が粉砕限界に達し、粒径が小さくならなくなっても、粉砕を続けることにより粉砕産物表面近傍の構造がさらに変化を続け、結晶の無定形化が進んでゆくことを示していると考えられる。
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