細菌の六価クロム輸送及び変換機能とクロムのバイオセパレ-ションに関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01550753
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 大竹 久夫 東京大学, 応用微生物研究所, 助教授 (10127483)
• キーワード: 六価クロム / バイオセパレ-ション / 重金属 / 膜輸送 / 細菌 / イオン変換

研究概要

最近の六価クロムストレス防御機能は有害六価クロムの膜輸送の調節と三価クロムへのイオン変換による低毒化と関係している。本研究の目的は細菌の六価クロムストレス防御機能の詳細な解明と、それを利用した六価クロムの生物分離(バイオセパレ-ション)の可能性を検討することであった。まず緑膿菌の六価クロム耐性遺伝子が硫酸イオン能動輸送系を経由する六価クロムイオンの膜輸送を調節することを発見し、そのプラスミドpUM505(約90kb)よりこれを支配する遺伝子(chrA)を初めてクロ-ニングした。塩基配列の決定から膜輸送調節型の防御機能は単一の遺伝子(chrA:1250bp)に支配されていることが解った。次いで六価クロム(陰イオン)を三価クロム(陽イオン)にイオン変換する珍しい細菌Enterobacter cloacae H01株を発見した。この生物機能により六価クロムは三価クロムに還元され低毒化されるとともに水酸イオンと反応して凝集沈澱することが解った。この生物機能を利用すれば有害六価クロムを無害化し、しかも金属クロムとして回収可能なことが解った。六価クロムは2価の陽イオンであり生成する三価クロムは3価の陰イオンであるから、両者の分離を目的として陰イオン交換膜を用いるバイオリアクタ-を設計した。六価クロムは陰イオン交換膜を通り細菌の培養系に拡散し、そこで三価クロムにイオン変換された。三価クロムは陽イオンのため膜を通過できず水酸イオンと反応して培養系内に沈澱した。このことにより約100ppmの六価クロムがほぼ完全に分離できた。

研究成果

• [文献書誌] Wang,P.,Mori,T.,Komori,K.,Sasatsu,M.,Toda,K.and Ohtake,H.: "Isolation and characterization of an Enterobacter cloacae strain that reduces hexavalent chromium under anaerobic conditions." Appl.Enviorn.Microbiol.55. 1665-1669 (1989)
• [文献書誌] Komori,K.,Wang,P.,Toda,K.and Ohtake,H.: "Factors affecting chromate reduction in Enterobacter cloacae." Appl.Microbiol.Biotechnol.31. 567-570 (1989)
• [文献書誌] Komori,K.,Toda,K.and Ohtake,H.: "Effects of oxygen stress on chromate reduction in Enterobacter cloacae strain H01." J.Ferment.Bioeng.69. 67-69 (1990)
• [文献書誌] Cervantes,C.,Ohtake,H.,Chu,L.,Misra,T.K.and Silver,S.: "Cloning,nucleotide sequence,and expression of the chromate resistance determinant of Pseudomonas aeruginosa plasmid pUM505." J.Bacteriol.
• [文献書誌] Komori,k.,Wang,P.,Rivas,A.,Toda,K.and Ohtake,H.: "Biological removal of toxic chromium using an Enterobacter cloacae strain that reduces chromate under anaerobic conditions." Biotechnol.Bioeng.
• [文献書誌] Wang,P.,Mori,T.,Toda,K.,Ohtake,H.: "Membrane-associated chromate reductase activity from Enterobacter cloacae." J.Bacteriol.