研究概要 |
本研究の目的は、複合酸化物の触媒設計に関して、触媒活性とその物理化学的性質との関連を明らかにして、設計に対する指針を得ることにあった。数多い複合酸化物の中で、触媒として良く用いられるペロブスカイト型複合酸化物について、メタンの酸化反応をテスト反応として用い検討した結果、次のことが明かとなった。1.複合酸化物の調製法と触媒活性の関連について、SrCeO_3を用いて検討した。調製時の固相反応温度の高いものほど単位表面積当りのC_2,CO_x生成速度が大きく、触媒の単位表面積当りの活性点の数が変化していることが判った。SrCeO_3においては、見かけの反応速度定数と塩基量の間に直線関係があるという知見が得られ、メタン酸化反応の活性点がCO_2が700℃以下で脱離する低い強度領域の塩基性点であることが示唆された。2.BaCeO_3とLaCeO_3のAサイトをLiで置換することにより、メタンの酸化触媒活性は最大2倍に増加した。LaCeO_3では、置換率の増加と共に触媒活性は増大し、価数の減少による酸素空格子が寄与していることが示唆された。BaCeO_3では、Liの寄与が大きいことが判った。以上のいずれの触媒も、メタンの酸化カップリング反応活性と完全酸化反応の活性は、ほぼパラレルに変化をした。3.Ceを含むペロブスカイト型酸化物は高活性であるが、Ceの一部が3価に還元され、しかもその表面には多量の炭酸塩が存在することが判った。ペロブスカイト型酸化物の酸素空孔または、O^ーが高活性を与えることが示唆された。300〜500℃で脱離する酸素が反応に関与し、これは格子の酸素に由来する。また、活性点は、塩基性点であると示唆された。4.触媒の結晶中の酸素と各金属イオンの間の結合距離の変化と、触媒活性の間には明瞭な相関関係は認められなかった。
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