1.プラズマグラフト荷電膜の作製 分画分子量約20万の高密度ポリエチレン限外濾過膜を基材膜として用いた。この基材膜に高周波プラズマを照射してラジカルを生成させ、その後アクリル酸、あるいはスチレンをグラフト重合した。プラズマ照射条件、グラフト反応条件を種々検討した結果、基材細孔を塞ぐことなく適当量のグラフト鎖を導入することができた。 スチレングラフト膜はさらにスチレンをスルホン化して負荷電膜とした。正荷電膜は、時間的制約から作製することはできなかった。今後、試みる予定である。 2.単一タンパク質溶液の分離 牛血清アルブミン、ミオグロビン、チトクロ-ムCを使用した。滴定法により各々の荷電量を測定した。等電点は文献値と大差なかったが、荷電量のpH依存性はタンパク質により大きく異なった。 溶液のpHを等電点をはさんで変化させ、タンパク質の荷電状態と阻止率の関係を検討したところ、タンパク質が負に荷電する高pH域で、膜の負荷電との反発により高い阻止率が得られた。等電点での阻止率は低かったが、当初予想したよりも高く、この理由は、ポリエチレンそのものにタンパク質が吸着するため膜細孔が小さくなり、大きさによる篩効果で分離されたものと考えられた。膜荷電とタンパク質の荷電が異なる低pH域では、静電的な吸着も生じるためか、膜透過流束、阻止率ともに不安定で、再現性の良いデ-タは得られなかった。 3.タンパク質混合溶液の分離 十分な時間がなく、わずかな実験しかできなかったが、単一系の結果からは混合系で高い分離率が予想される場合でも、実際の混合溶液では分離率が悪くなってしまう傾向があり、今後の検討課題である。
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