抗体の抗原に対する高い親和性、特異性を利用したイムノアッセイは臨床検査などの微量分析に不可欠の分析法であるが、現在の方法は抗原抗体複合体と非結合物の分離が必要で、分析操作に熟練と長時間を要する。本研究ではマ-カ-を内包したリポソ-ムを抗体(あるいは抗原)を結合させ(イムノリポソ-ム)、生体の補体系の膜侵襲反応を利用してこのリポソ-ムを抗原(あるいは抗体)量に応じて破壊し、分析を行う方法を開発しようとするものである。このためイムノリポソ-ムの補体系による破壊機構について研究を行った。本年度に得られた主な結果は 1.イムノリポソ-ムはゼチランを含む緩衝液中では、長期間安定で内包されているマ-カ-はほとんど放出されない。 2.ウサギ抗体を結合したイムノリポソ-ムは添加した補体濃度に応じて内包マ-カ-を放出する。また、抗ウサギ抗体をさらに加えるとリポソ-ム破壊量は著しく増加した。前者は補体系第2経路、後者は古典経路によるリポソ-ム破壊であり、この方法によって生体の補体活性を容易に測定できる。 3.抗原を結合したイムノリポソ-ムに、その抗原に対する特異抗体と補体を加えると、添加量に応じたマ-カ-の放出が起こった。これはリポソ-ム上に形成された抗原抗体複合体によって補体系が活性化されるためで、この方法は特異抗体量を測定するための均相法イムノアッセイとして利用できる。
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