抗生物質は、微生物によって生産され、微生物やその他の細胞、例えば、癌細胞の増殖を阻害する。だが、これを作る微生物は、自己産物によって自滅することはない。これを自己耐性と呼ぶ、筆者は、DNA合成阻害をその作用機序とする抗癌抗生物質ブレオマイシンを選び、その生産菌の自己耐性機構を目的として研究を進めた。 その結果として、ブレオマイシン生産菌は二種類の自己耐性遺伝子が存在することを明らかにした。その一つ、blmAと筆者により命名された遺伝子によってコ-ドされるタンパク質は、共同因子を必要とする事なしにブレオマイシンを不活性化するのに対し、blmBと命名された遺伝子の産物は、アセチルコエンザイムA共存下でブレオマイシンをアセチル化により不活性化する酵素であることを明らかにした。しかも、両遺伝子は隣接して存在することを見いだした。3kbまでその最低必須領域を縮めたblmB遺伝子に関しては、その遺伝子内に存在する数種の制限酵素切断部位を決定した。一方、blmA遺伝子は約700bpまで最低必須領域を縮めたのち、そのDNA塩基配列の決定を行うことにより、プロモ-タ-領域を含む全遺伝子構造を明らかにした。その塩基配列から推定したタンパク質の分子量は13197であり、122のアミノ酸からできていた。blmA遺伝子をpUC18あるいはpUC19プラスミドに連結し大腸菌での発現性を調査したところ、本遺伝子は大腸菌内で発現することがあきらかになった。今後は、blmBの大腸菌での発現性を調査する予定である。
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