1988年および1989年にダイズ品種「ワセスズナリ」および「毛振」の乾燥種子にガンマ-線を20〜40KR照射し、適宜世代促進を行いながらM_1〜M_5植物までを養成した。その間、M_2種子〜M_3種子を材料にして種子の一部をナイフで削り取ってタンパク質を抽出し、SDS電気泳動法により種子タンパク質のバンドパタ-ンの変異探索を行った。その結果、これまで既存品種の中には見られなかった変異を発見し、その特質を明らかにしたほか、一部の変異については遺伝様式も明らかにした。 1.ワセスズナリに30KR照射した後代から、グリシニン(11Sグロブリン)のグル-プIサブユニットのタンパク質が大幅に減少した変異体を見出した。この変異体は生存可能であり単因子劣性遺伝を示した。βコングリシニン(7Sグロブリン)に対するグリシニンの比率は原品種に比べて大幅に低下していることが、デ-ビス系電気泳動によるバンドのデンシトメトリ-で明らかにされたが、タンパク質の全体としての含量(%)は原品種に比べて僅かに低下した程度であった。 2.ワセスズナリに40KRを照射した後代から、βコングリシニン(7Sグロブリン)のαおよびβサブユニットのタンパク質がほとんど欠失している変異体を見出した。この変異はヘテロ遺伝子型からの分離体として見出されたが、幼植物段階でクロロシスを起し致死した。この変異体はその後もツギツギと分離し出現したが、いすれの種子も幼植物でクロロシスを起し致死した。同様の変異は毛振に20KRの照射を行ったものからも見出されたが、この変異体は開花期まで育ったものの結実には到らなかった。 3.毛振はβコングリシニンのα'サブユニットタンパク質の欠失に特徴があるが、このバンドの復活して来る変異体も見出された。この変異の遺伝性は今後の検討課題である。
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