研究概要 |
ダイズ種子タンパク質の栄養価向上のためには、タンパク質中の含硫アミノ酸含量を高めることが必要である。そのためにはダイズ種子貯蔵タンパク質の2つの主要成分のうち、7Sグロブリンの生成量を減少させればよく、7Sグロブリンのサブユニット(α',αおよびβ)の欠失をもたらす変異遺伝子を見出す必要がある。このうち、α'サブユニットの欠失遺伝子はダイズの既存品種の中に既に見出されているので、残る2つのサブユニットの欠失遺伝子をガンマ-線照射による突然変異誘発により見出すことを本研究の目的とした。 品種ワセスズナリの種子にガンマ-線40KRを照射した後代の種子をSDS電気泳動法で調査したところ、M_4の種子からαおよびβの2つのサブユニットが同時に欠失した突然変異を選抜することに成功した。 この変異遺伝子はホモ接合型になると、幼植物段階でクロロシスを起して致死すること、しかしながらヘテロ接合型では生存上異常は生じないので、この変異遺伝子の維持増殖は可能であること、ヘテロ接合型植物に着生する種子には正常:αおよびβサブユニット量半減:両サブユニットの欠失が3:4:1の比で分離していることが明らかにされた。 これと同じ時期に品種ワセスズナリにガンマ-線40KRを照射した後代M_3種子の中に、11Sグロブリンの酸性サブユニットタンパク質の一部を成すグル-プIサブユニット(A_1,A_2,A_3)が欠失しているものが誘発されていることを見出した。 この変異遺伝子は1遺伝子座の劣性遺伝子として働らき、正常:グル-プIサブユニット半減:同サブユニット欠失が1:2:1の比で分離を生じることが明らかにされた。この変異遺伝子はホモ接合型植物でも生育には何ら異常は示さなかった。
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