イネの脱粒性は、農業上重要な形質であってこれまでに多くの研究者によってその遺伝子分析が行われてきたが、関与する要因が複雑であるため遺伝子数や優劣性に関する報告が主で座乗染色体について報告されたものは第8連鎖群にあるものだけである。そこで、本研究では、脱粒難で長稈の日本型水稲品種農林29号と脱粒易の半矮性準同質遺伝子系統SC2ならびにSC4を用い、半矮性・多収品種の育成に大きな役割を果たした半矮性遺伝子sd-1と脱粒性遺伝子との連鎖分析を行った。SC2とSC4は、農林29号の遺伝的背景に台湾のインド型半矮性品種台中在来1号と九州の日本型半矮性品種シラヌイからそれぞれ半矮性遺伝子と脱粒性遺伝子を導入して育成した系統である。 SC2およびSC4の脱粒性は、穂ばらみ期にすでに発現し護穎基部に離層を形成させるが、脱粒を始める時期は出穂後33日目頃からであった。 SC2/農林29号とSC4/農林29号のF_1の脱粒性程度が両親の平均に近かったことから、SC2とSC4の示す脱粒性について難が不完全優性であることがわかった。さらに、これらの2組合せのF_2において稈長と脱粒性との関係を調べたところ、半矮性個体のほとんどが脱粒易であったのに対し長稈個体では脱粒難が多く、半矮性遺伝子と脱粒性遺伝子が連鎖関係にあることが明らかとなった。sd-1と脱粒性遺伝子との間の組換価を算出した結果、SC2/農林29号のF_2では10.6±4.8%、SC4/農林29号のF_2では15.6±4.1%となった。
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