イネの第1染色体に座乗する半矮遺伝子sdー1が劣性の脱粒性遺伝子と約13%の組換価で連鎖していることを見出し、この脱粒性遺伝子をshー2と命名した。 この脱粒性遺伝子の発現を、半矮性準同質遺伝子系統を用いて組織学的に調べたところ、この遺伝子は護頴基部に離層を形成させる作用をもつことが明らかになった。離層は、出穂前の頴花生長期にすでに形成とれていたが、脱粒が起こるのは出穂後33日目頃からであった。インド型ならびに韓国の日印交雑品種は、小枝梗の物理的強度が日本型品種とは比較して弱かったが、脱粒性遺伝子shー2は小板梗の物理的強度とは無関係であった。脱粒性測定装置によって脱粒性程度を調査したところ、shー2に関してヘテロ個体は劣性ホモの個体と比較して脱粒性程度が小さく、優性ホモ個体に比べてやや脱粒性程度が大きかった。このことから、shー2は不完全劣性であることがわかった。一方、ヘテロ個体の護頴基部には離層が形成されていたことから、shー2は離層形成に関しては優性であることがわかった。離層と形成する脱粒離のヘテロ個体と脱粒易の劣性ホモ個体とのあいだには、離層形成について明らかな差は認められなかった。以上の結果から、二つの遺伝子型で脱粒性程度に差が生ずる原因は、離層組織内の柔組織や、あるいは離層形成に関与する酵素活性などの生理的差異に起因するものと考えられた。 中國のインド型半矮瀬品種低脚烏尖と矮脚南持ならびにわが國の日本型半矮性品種十石が半矮性遺伝子sdー1とともに脱粒性遺伝子shー2を共有していたことから、これらの品種を半矮性遺伝子源として育成された世界各地の半矮性品種は、sdー1とともに脱粒性遺伝子shー2を有する場合が多いことが推測された。
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