本年度の研究計画では、育種現場での実態調査、および育種家からの聴取などによって、熟練育種家の経験とカンについて調査することを最重点にし、情報伝達およびデ-タ表現の新しい媒体として、自然言語意味論、フラクタル理論、数学的カオス理論あるいはファジ-集合論などの利用可能性について調査すること、および比較・検討のためのデ-タ作成であった。これに対して、 1.各地の育種試験地を訪問して調査した結果、得られた知見として、 (1)育種戦略として、全体的に優良な広域適応性を有するものの選抜だけでなく、多少の欠点はあっても、比較的に狭い特定地域あるいは特定目的に合致したものも選ぶ必要がある。 (2)育種家の“経験とカン"として、「圃場での観察は、担当各地域の自然条件、農家の実状および流通機構や消費者などの社会的な条件などを考慮して、その系統の利用方法を模索すること、」が考えられる。 などがあり、今後これらの詳細な内容について研究を進め、環境条件デ-タベ-スと選抜との関係についても考察する方針である。 2.自然言語意味論については、“状況意味論"、“デ-タ意味論"などについて詳細に調べる必要があると思われるが、フラクタル、カオスおよびファジ-については数学的な興味はあるが、その利用方法については本研究の範囲を越えているものと思われる。 3.育種試験に関するいくつかのデ-タを収集したが、第1項に示した方針により、これらは将来、エキスパ-トシステムとの関連で利用されるべきものと考えられる。
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