オオムギにおける受精競争の研究は極めて少ない。本研究では、受精競争遺伝子(Ga-2)が第3染色体の長腕末端部に座乗するエステラ-ゼ同位酵素遺伝子群との連鎖を利用して、この同位酵素遺伝子型の分離の歪から受精競争を認識することにした。 1.Ga-2遺伝子による分離の歪は、栽培年次や開花・受精時の温度によって大きく変動しない。そのため、栽培年次を変えて実験を行うことができるし、また、開花から受精までの期間の温度を制御する必要もない。このことは、受精競争の実験を遂行する上で有利なことである。 2.受精競争のみられた組合せについて、正逆戻し交配やF_2集団の分離の歪を調べた結果、受精競争はGa-2遺伝子をもつ花粉が一方的に受精にあずかることが明らかになった。 3.受精競争の認められた組合せの交配親の花粉を物理的に混合して受粉したが、受精競争は全く起きなかった。また、交配親の花粉を時間差をつけて互いに遅延受精したが、正逆いずれの場合も類似の結果を得た。これらの結果は、オオムギが例外なのか、Ga-2遺伝子の特異性によるものか、更に検討を要する問題である。
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