研究概要 |
作物の雑種集団における分離の歪は,品種分化や雑種集団の維持方法を考える上で,極めて重要な研究課題である。この分離の歪の1つの要因としての受精競争に関する研究は,オオムギの場合,イネやトウモロコシに較べて極めて少ない。最近,著者はオオムギの特定の組合せの雑種集団で分離の歪が起きることを発見し,これに関与する遺伝子(Gaー2)が第3染色体長腕末端部に座乗するエステラ-ゼ同位酵素遺伝子(Estー4)と11.7%で連鎖していることを見出した。そこで,この同位酵素遺伝子型の分離を指標として,多くの雑種集団における分離の歪を調べた。 1.分離の歪は雑種の栽培年次や正逆交雑によって大きく変動しない。 2.分離の歪は雑種の花粉からの遺伝子達の違いによって生じる。すなわち,Gaー2とgaー2遺伝子をもつ花粉が分離する雑種個体では、ほとんどGaー2遺伝子をもつ花粉のみが受精に関与し,雌側ではGaー2とgaー2遺伝子をもつ配偶体は正常に分離し受精にあずかる。 3.受精競争に関与する遺伝子のうち,gaー2遺伝子は世界に広く分布するが,Gaー2遺伝子の地理的分布は北インド,ネパ-ル,中国,韓半島および日本の一部の地域に限られる。
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