シイタケの子実体が発生する温度(型)を規定する遺伝因子の同定と同因子の染色体上の座位を解析する目的で、本年は、下記の実験を行った。 1.テスタ-菌株の選定および調整:既徃の研究成果から子実体の発生温度が、比較的高い「高温型」、低い「低温型」、その中間の「中温型」に所属すると思われる一核菌糸、それぞれ2株、3株、2株を発生温度型テスタ-として選定した。また、連鎖分析の標識遺伝子として菌叢形態に関与する9種の劣性突然変異遺伝子と2種の不和合成因子を用い、これらの2つ以上の遺伝子を保有する5種の遺伝子型ー核菌糸を調整し、各遺伝子型につき2株、計10株の標識遺伝子テスタ-を選定した。 2.テスタ-間のF_1分析:上記テスタ-17株の一核菌糸間で総当たり交配を行い、和合成を示した。104株のF_1について発生温度型を調査した。設定した3温度区(高温22°C、中温17°C、低温10°C)のうち2温度区にまたがって子実体が発生する株が多く、特に低温型と中温型との判別が困難であった。それ故、高温区で発生したもの全てを高温型、高温区以外で発生の認められたものを低中温型として分析した。 その結果、発生温度型テスタ-を次の3つの型に類別できた。即ち、I型:全ての交配組合せで高温型を示したもので、先に高温型と推定して選定したテスタ-はこの型であった。II型:I型との組合せにおいてのみ高温型を示したもの、III型:I型およびII型以外の組合わせによって高温型を示したものである。さらに、標識遺伝子テスタ-の発生温度型についても、これら3つの型が認められた。 次いで、上記標識遺伝子テスタ-間の組合せの中から、I型×II型のF_1を3株選び、それぞれについて、200個の単胞子ー核菌糸体を分離し、発生温度型テスタ-と交配した後、木粉培地およびほだ木に培養して、次代分析を継続している。
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