研究概要 |
シイタケ子実体の発生温度型を規定する遺伝因子を同定することを目的として,本年度は下記の実験を行った。 F_1分析の結果から,標識遺伝子テスタ-をそれが保有すると考えられる発生温度型因子によりI型(全交配組合せで高温型),II型(I型との交配で高温型)およびIII型(I,II型以外の交配で高温型)に区分し,I型×I型およびII型×III型の次代分析を行った。その結果,高温型を示したI型×I型の単胞子ー核菌糸体と体種の発生温度型テスタ-[I型とIII型]とを組合せた二核菌糸体は,それぞれ98%および85%が高温型を示した。低中温型を示したII型×III型の単胞子ー核菌糸体と上記の発生温度型テスタ-[I型]との組合せおいては98%の二核菌糸体が高温型を示したのに対し,III型のテスタ-との組合せではほぼ半数に相当する57%の二核菌糸体が高温型を示した。これらの結果から,高温型は(不完全)優性発現する少数の主働遺伝子によって規定されていると推察された。 次に,互いに独立関係にある標識遺伝子[morー2,morー3,morー4,不和合性因子AおよびB]それぞれと高温型因子との連鎖関係を調査するために,II型×III型の単胞子ー核菌糸体のうち,III型テスタ-との交配組合せにおいて高温型を示した57%(110株)の単胞子ー核菌糸体について,親型と組み換え型の出現頻度を調査した。その結果,morー2,morー3,不不和合性因子AおよびBのそれぞれと高温型因子との間では,いずれも親型と組み換え型が1対1の割合で出現し,高温型因子はこれらの標識遺伝子とは独立の関係にあるものと推察された。一方,morー4と高温型因子との間では,親型の出現頻度がやや高く,1対1の分離比に適合しないため(X^2=4.40;0.05>P>0.025),両因子は連鎖している可能性があると推察された。
|