作物は花芽形成以外にも様々な光周性反応を示す。中でも短日条件で誘起されるバレイショ塊茎形成とダイズ等の豆類の伸育停止は農業上も重要な光周性反応である。バレイショの塊茎形成は短日下の葉中で形成される塊茎形成物質によって引き起こされる。先に我々はこの物質を単離してその化学構造を決定し、チュベロン酸と命名した。チュベロン酸と類以した化学構造を持つジャスモン酸は植物界に広く存在し、生育阻害、細胞分裂阻害あるいは葉の老化促進等の様々な阻害作用を示すことが知られている。バレイショの場合、塊茎が形成されると植物体の成長は停止する。共に短日に依存し、また成長停止が見られる点で豆類の伸育停止と塊茎形成は類似している。したがってダイズ等の豆類の伸育型の決定においてジャスモン酸類が関与している可能性がある。本研究はダイズの伸育型決定におけるジャスモン酸類の関与について調べたものである。 短日条件下で伸育が停止する有限伸育型(Harosoy Dtl)と、開花を続けながら伸育も続ける無限伸育型(同dtl)の同質遺伝子系統を圃場で育成し、まず葉中のジャスモン酸類の活性変動を比較した。その結果、活性は有限伸育型の方が常に高く、伸育停止期において最大値を示した。有限伸育型の葉中の活性物質の本体はチュベロン酸ではなくジャスモン酸であると思われた。高速液体クロマトグラフィ-による純化と質量分析の結果、ジャスモン酸の存在が確認された。無限伸育型のダイズの茎頂にジャスモン酸を与えて無菌的に培養したところ、10^<ー7>M以上で強い生長阻害作用が認められた。また10^<ー6>M以上与えた場合は、伸長生長の完全な停止が観察された。以上の結果はダイズの伸育型の決定にはジャスモン酸あるいはその誘導体が関与していることを強く示唆している。日長がジャスモン酸レベルにどのようなメカニズムで影響するかは、今後に残された問題である。
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