本年度はとくに完熟風乾状態のササゲさや(pericarp)に含まれているジベレリン(GA)をイネ(短銀坊主)に吸収させた時、このGAがどのような動態を示すかについて研究をおこなった。GAは酸性で酢酸エチル、およびn-ブタノ-ル相に分画し、アンモニア性イソプロパノ-ルでペ-パ-クロマトグラフィ-をおこない、イネ幼苗テストで調査した。 その結果ササゲさやには酢酸エチルに可溶でRf値の高いGA(GAI)、Rf値の低いGA(GAII)およびn-ブタノ-ルに可溶のGA(GAIII)の存在することが判明した。GAI、IIは遊離型、GAIIIは結合型と考えられる。この3種のGAを別々に土壌を混じたベットを用いてイネに吸収させたところつぎのような結果を得た。 1.GAIIIは土壌によってGAIIに変化した。この変化は加熱した土壌では認められないことから、土壌中の微生物によるものと考えられる。吸収に用いたイネ植物体からは本実験に関する限りGAを検出することができなかった。イネの成長促進は認められなかった。 2.GAIIをイネに吸収させたところ、イネ植物体からはGAIが検出され、イネの生長は促進された。 3.GAIをイネに吸収させたところ、イネ植物体からはGAIがそのまま検出され、イネの生長は著しく促進された。 すなわち結合型GAであるGAIIIは土壌中の微生物によって遊離型GAのGAIIに変わり、GAIIはイネに吸収されてGAIに変化するものと推測される。 なお、これらの実験結果から 1.植物の遺体に含まれているGAは土壌に還元されて、そこに成育する植物に吸収され、その生長に関与する可能性がある。 2.植物は種類によって固有のGAを含むと考えられているが、他の植物に由来するGAを土壌中から吸収し、検出される可能がある。
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