イグサの収穫期は、7月中旬から下旬であるとされているが、その根拠を物質生産的立場から解明することを目的として実験を行った。そのため、前年度はイグサ個体群の個体群光合成・呼吸を4月から8月中旬まで経時的に測定し、一日の純生産速度がどのように推移するかを計算した。この実験から、イグサの収穫適期とされている時期の生育状態は、いわゆるCeiling LAIからCeiling Yieldに近い状態であるという仮定をほぼ実証出来た。本年度は、呼吸の温度反応を測定温度を広げて、地下部の呼吸量を溶存酸素計で、それぞれ生育時期毎に測定し、前年度得られた結果を追証しようとした。得られた結果を以下に示す。 1.呼吸の温度反応:個体当りの呼吸速度の測定を、5月11日から8月6日まで約20日間隔で20回、5段階に温度を変化させ行った。呼吸の温度反応は光合成とは異なり、温度の上昇に伴い指数関数的に大きくなった。測定温度の範囲内では、温度が高くなるほど値が高くなった。呼吸の温度係数Q_<10>は2.1〜1.4の間にあり、生育に伴って小さくなった。 2.イグサ地下部の呼吸速度:土耕、水耕栽培したイグサを用い地下部の呼吸速度を測定した。測定には、YS157型溶存酸素計を用いて、地下部を浸したポット中の蒸留水の酸素減少速度を測定した。ポットは人工照明型温度制御室内に置き液温を約25℃と35℃の2段階に保った状態で測定した。土耕栽培した地下部の呼吸を測定するに当っては、超音波洗浄器で地下部で洗った。25℃に補正した乾物1g当りの酸素消費速度は、植付け後日数が浅い頃は、約0.6mgの値であったものが、収穫期に近付くと約0.2mgと低い値になった。この値をCO_2に換算すると、約0.7〜0.2mg/g dry/hrのCO_2を放出していることになる。
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